投資を始めたいけれど、「何に投資すればいいのかわからない」「リスクが怖い」と感じる方は多いでしょう。そんな投資初心者にとって、ETF(上場投資信託)は非常に優れた選択肢です。本記事では、ETF投資の魅力を学術的な研究を参考にしながら解説していきます。
ETFとは?
ETF(Exchange Traded Fund)とは、複数の銘柄をひとまとめにして取引できる投資商品です。株式市場に上場しており、個別株のように証券取引所でリアルタイムに売買できる一方、インデックスファンドのように分散投資が可能という特徴を持っています。例えば、S&P500に連動するETFであれば、アメリカの主要500社にまとめて投資できるため、一つの企業に依存するリスクを軽減できます。また、ETFには株式型、債券型、コモディティ型、不動産投資信託(REIT)型などさまざまな種類があり、投資目的に応じて選択できる柔軟性も魅力の一つです。
さらに、ETFには地域別(先進国、新興国、日本など)やセクター別(テクノロジー、ヘルスケア、エネルギーなど)に分類されたものもあり、特定の市場や産業への投資を容易に行うことができます。また、配当を重視した高配当ETFや、環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮したサステナブルETFなど、多様なテーマに基づいたETFも存在します。
投資家にとってのメリットは、低コストで手軽に分散投資ができることだけでなく、売買の自由度が高いため市場の状況に応じて素早くポートフォリオを調整できる点にもあります。そのため、初心者から経験者まで幅広く利用されています。
ETFが初心者に適している理由
1 分散投資によるリスク低減
個別株投資は1つの企業の業績に大きく左右されるため、価格変動リスクが高くなります。一方、ETFは複数の銘柄に分散投資するため、リスクが軽減されます。
学術的根拠:
Markowitz(1952)の「ポートフォリオ選択理論」によると、異なる資産に分散投資することでポートフォリオ全体のリスクを低減できることが示されています1。さらに、Fama and French(1992)の研究では、広く分散されたポートフォリオが長期的に市場平均に近いリターンを得る傾向があることが示されています2。
2.2 低コストで投資できる
投資信託には管理手数料(信託報酬)がかかりますが、ETFは一般的にアクティブファンドよりも手数料が低い傾向にあります。これは、ETFが市場のインデックスに連動する「パッシブ運用」だからです。
学術的根拠:
Bogle(2002)の研究によれば、低コストのインデックス投資は高コストのアクティブファンドを長期的に上回る傾向があることが示されています。これは、手数料が複利で蓄積すると長期的なリターンに大きく影響を及ぼすためです3。
2.3 少額から投資可能
ETFは1口単位で売買できるため、数千円から投資を始めることが可能です。これにより、初心者でも無理なく投資を始められます。
学術的根拠:
Merton(1969)の「消費・投資モデル」によれば、投資家は若いうちから少額でも投資を始めることで、長期的な資産形成に有利になるとされています4。
2.4 リアルタイムで取引可能
ETFは株式と同じように市場でリアルタイムに売買できるため、市場の変化に素早く対応できます。これにより、価格変動の激しい相場でも柔軟な対応が可能です。
学術的根拠:
Chordia, Roll, and Subrahmanyam(2001)の研究では、市場の流動性が高い金融商品ほど取引コストが低く、投資家にとって有利であることが示されています5。ETFは上場しているため、流動性が比較的高い点もメリットです。
3. 具体的なETFの選び方
初心者がETFを選ぶ際に考慮すべきポイントは以下の通りです。
- 連動する指数:ETFは、日経平均株価やS&P500などの主要指数に連動するものが多く、選択する際にはどの指数に連動しているかを確認することが重要です。例えば、S&P500に連動するETFは、米国の主要500社に投資できるのに対し、TOPIX連動ETFは日本の東証プライム市場全体をカバーします。また、新興国株式に連動するETFや、特定のテーマ(例えばAIやグリーンエネルギー)に特化したETFもあり、投資目的に応じた選択が可能です。
- 運用コスト(信託報酬):ETFの運用コストは、一般的にアクティブファンドよりも低い傾向があります。信託報酬はETFごとに異なりますが、低コストのETFを選ぶことで、長期的なリターンを最大化できるとされています。
例えば、日本市場に連動するETFの中では、TOPIX連動型の「NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(1306)」や「MAXIS TOPIX ETF(1348)」が信託報酬の低さで知られています。また、日経平均に連動する「NEXT FUNDS 日経平均連動型上場投信(1321)」も比較的低コストで運用されています。
日本国内ETFの信託報酬は0.1%前後のものが多く、海外ETFに比べて為替リスクがないため、日本の投資家にとって扱いやすいというメリットがあります。ただし、ETFによって流動性や取引コストに差があるため、購入前に比較検討することが重要です。また、経費率の違いが積み重なると長期的にリターンに大きな差を生むため、投資家は信託報酬の比較を慎重に行うことが推奨されます。
- 取引量と流動性:売買が活発なETFを選ぶことで、取引コストを抑えられる。流動性の高いETFはスプレッド(買値と売値の差)が狭く、売買時のコストを最小限に抑えられるため、短期取引や機動的な資産運用にも適しています。例えば、日本市場では「NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(1306)」や「MAXIS 日経225上場投信(1346)」などが取引量の多いETFとして知られています。また、ETFの流動性は出来高だけでなく、市場での価格と純資産価値(NAV)の乖離の少なさも重要な指標となります。
- 分配金の有無:ETFには、定期的に配当を支払いその収益を得ることを目的とした「分配金あり(インカムゲイン重視)」のタイプと、分配金を出さずに運用益を内部で再投資することで資産の成長を目指す「分配金なし(キャピタルゲイン重視)」のタイプがあります。投資目的に応じて適切なETFを選択することが重要です。例えば、定期的な収入を得たい場合は高配当ETFを、長期的な資産成長を狙う場合は分配金なしのETFを検討すると良いでしょう。
4. まとめ
ETFは、
- 分散投資によるリスク低減
- 低コストの運用
- 少額投資が可能
- リアルタイム取引が可能
といったメリットがあり、投資初心者にとって非常に適した金融商品です。
学術的な知見でもETF投資の優位性が示されており、長期的な資産形成を目指す初心者におすすめです。まずは人気のあるETFをリストアップし、比較してみることから始めましょう。その中から自分に合ったETFを選び、少額から投資をスタートしてみてはいかがでしょうか?
参考文献
- Chordia, Tarun, Richard Roll, and Avanidhar Subrahmanyam. “Market Liquidity and Trading Activity.” The Journal of Finance, vol. 56, no. 2, 2001, pp. 501-530.
- Markowitz, Harry. “Portfolio Selection.” The Journal of Finance, vol. 7, no. 1, 1952, pp. 77-91. ↩︎
- Fama, Eugene F., and Kenneth R. French. “The Cross-Section of Expected Stock Returns.” The Journal of Finance, vol. 47, no. 2, 1992, pp. 427-465. https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.1992.tb04398.x ↩︎
- Bogle, John C. Common Sense on Mutual Funds: New Imperatives for the Intelligent Investor. Wiley, 2002. ↩︎
- Merton, Robert C. “Lifetime Portfolio Selection under Uncertainty: The Continuous-Time Case.” The Review of Economics and Statistics, vol. 51, no. 3, 1969, pp. 247-257. ↩︎
- Chordia, Tarun, Richard Roll, and Avanidhar Subrahmanyam. “Market Liquidity and Trading Activity.” The Journal of Finance, vol. 56, no. 2, 2001, pp. 501-530. https://doi.org/10.1111/0022-1082.00335 ↩︎
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